AKB48の全シングルの歌詞を、1人の少女のストーリーに喩えてみた(2/10)
このエントリは、次のエントリの続きです。
AKB48のシングルの歌詞を、1人の少女のストーリーに喩えてみた(1/10)
メジャー2nd「制服が邪魔をする」
この曲の出だしは衝撃的なものです。
なんで渋谷は
夜になるのが こんなに早いの?
ちょっと 会っただけ
2人 普通に学校帰り
あっという間に
門限近くのゲーセン
だって 恋のはじめは
いろいろあるから
「制服が邪魔をする」
いきなり物語が「渋谷」から始まっているのです。
先ほど「不純異性交遊」といいましたが、その「衝撃」は「渋谷=ウリの街」ということ「だけ」を意味しているのではありません。
いわゆる「少女の火遊び」など、20世紀中に使い古されたイメージですし、2年前に当時、小学生のメンバーが大半だったBerryz工房が「あなたなしでは生きてゆけない」(04年)で歌っていますから。
ここで筆者が言いたいのは、1つ前の「会いたかった」と比べて、あまりにも風景が変わってしまったということです。
自転車全力でペダル
漕ぎながら坂を登る
風に膨らんでるシャツも
今はもどかしい
(中略)
木漏れ日のトンネル夏へ
続く近道さ
「会いたかった」
ここから分かるのは、「会いたかった」の主人公が田舎に住んでいたということです。
「ちょっと」「学校帰り」「渋谷」の「ゲーセン」に立ち寄ることが可能なスクールゾーンを持つ学校は、「自転車全力でペダル 漕ぎながら坂を登る」必要があるような場所に建っていません。
「シャツ」が「膨ら」むほどの「風」がどこからか吹いてきても、それは高層ビル群に阻まれて届きませんし、都会では「夏へと続く」「トンネル」なんていう情緒溢れた道などありません。
渋谷は、その名のとおり坂道が多い(=谷だから)ことで知られていますが、いわゆる情緒などイメージできないでしょう。
よって、ここから分かるのは、主人公の少女が「田舎から東京へ引っ越してきた」ということなのです。
少女の急変
そもそもの話、「会いたかった」というタイトルは妙です。
「好きならば 好きだと言おう」という歌詞から分かるとおり、この曲は「会ったあと、どうするか(=結果として恋をした、告白したくなった)」を歌っているわけです。
それならば「素直になろう」のようなタイトルが相応しいはずですが、「会いたかった」というのは、「出会ったこと、それ自体」を賛美しているものなのです。
もちろんメタ的にみれば、これがメジャーデビュー曲であり、AKB48が「会いにいけるアイドル、通称会いドル」を標榜していることから、「ファンが劇場に来てくれる=会いに来てくれることがうれしい」という喜びを歌ったものだと解釈できます。
が、これは詞の中の少女の話なのです。
先ほど、「『会いたかった』の主人公は、恋に恋してる状態にある」と書きましたが、どうやらその「恋の病」は重かったようです。
これを見てください。
あなたは「帰ろう」って
いい人ぶって言うけど
本音は違うでしょう?
ねえ どうするの?
制服が邪魔をする
もっと自由に愛されたいの
どこかへ 連れてって
知らない世界の向こう
「制服が邪魔をする」
これは明らかに少女のほうから「ラブホテルへ行きたい」と誘っています。
いえ、口には出されていないかもしれませんが、そう願っていることは確かです。
歌詞の冒頭に「渋谷」という地名が出てくる点から、この「知らない世界の向こう」は抽象的なイメージなどではなく、具体的な地名を持っている領域であるはずです。
「ゲーセン」が立ち並ぶのは「センター街」ですが、まさかそこは「知らない世界」とは呼ばないでしょう。
現時点で2人はそこにいるのですし、「制服が邪魔」をして行けない場所といえば、決して「原宿・表参道方面」などではなく、ラブホテル街の「円山町」をおいてほかにないのです。
これはどうしたことでしょう。
つい先日まで、恋に恋していた少女が、しかも「スカート、ひらり」「会いたかった」と2曲続けて「告白できない段階」に留まっていた少女が、突然のビッチ化を果たしてしまったのです。
確かに「何をしても許される年ごろよ」と歌ってはいましたが、その覚悟や決意が生まれた経緯がまったく見えてきません。
少女は都会へ来て、「なにか得体の知れない変化」に呑まれてしまったようです。
次のエントリへ。
AKB48のシングルの歌詞を、1人の少女のストーリーに喩えてみた(3/10)