萌え豚っていうな!

萌えヲタのことを萌え豚となんの根拠もなく言うのを止めさせることを目的としたブログ。自分で言うことも含む。

2010年の日本のアイドルのまとめ――AKBと「もしドラ」、平野綾のテレビ進出

 2010年のアイドル業界は、AKB48K-POPに席巻されました。

 一方で、ハロプロは凪ぎに入ってしまい、クリティカルな現象が見受けられない状態が続いています。(ここ数年と同様に。古参ゆえの宿命でしょうか)

 道重さゆみのブレイクは大きなトピックですが、これは紙幅の関係上、別のエントリに譲ります。*1

 前回の「週刊AKB」で峯岸みなみが語っていましたが、アイドルの勢力地図は数年で描き替えられる運命にあり、そのときこそがハロプロ再浮上のチャンスとなるでしょう。

 「AKBの台頭」が「アンチハロプロ」であったように、それは必ずや「アンチAKB」といった意味合いになります。

 それが何を示しているのか、そして今後のAKBの活動はどうなるのか。

 そのあたりを考えるために、今年の彼女たちの活動を振り返ってみましょう。

今年の芸能界のトップはAKB48と嵐

 今年のAKBは、女性アイドルの中で、無敵といっていい状態でした。

 ユーキャンの新語・流行語において、珍しくグループ名で選ばれたことをはじめ、ほかの面に関しても、ジャニーズのトップである嵐と互角の戦いをみせました。

 筆者など勝ってすらいたのではと思いますが、分かりやすいのが、音楽面での比較でしょう。

 「オリコンのトップ10を2組で独占」といいますが、音楽配信で嵐がコケまくった一方で、AKBは連続してヒットを出しました*2し、首位を嵐に奪われた映像ソフトに関しても、AKBはDMMなどの配信や専用の通販があるぶん、オリコンのランクでは下がるのが必然です。(劇場もある)

 テレビ出演に関してもいい勝負でした。

 例の「アイドルの命は動きだ」というテーゼに絡めていうと、AKBは日本テレビの「密室謎解きバラエティ 脱出ゲームDERO!」にレギュラー出演し続け、嵐も「VS嵐」というレギュラーを持ちました。(いずれもゴールデンでアトラクション体験がテーマ)

 またAKBは24時間テレビで、嵐は紅白ですし、CMの出演本数でもいい勝負でしょう。

 これらのことから、この2組はアイドル業界のみならず、芸能界全体でのトップ争いをしていたと言えます。

年間ベストセラー「もしドラ」のモデルに

 ただ何よりもクリティカルなのは、「もしも高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら(通称:もしドラ)」のヒットです。

 これは一番売れた本ですから、内容に関して一々説明はしませんが、ヒロインのモデルになったのがメンバーの峯岸みなみです。

 彼女は不遇の存在でして、「知名度がありファンも多いのに、総選挙でトップ10に入れない」といった悲劇に(同じメンバーの秋元才加とともに)見舞われ続けています。

 そのためか、先ほどの「週刊AKB」でも、つねにネガティブな発言をくり返して、その場を暗くしていましたが、それゆえ、冷静にグループを観察する目を持っています。

 「もしドラ」の著者である岩崎夏海は、そんな峯岸の特徴を活かして、あのヒロインを作り上げたのではないでしょうか。

 どうせなら、映画版のヒロインを彼女にして欲しいと思いましたが、実際にはメンバーの前田敦子が担当することになりました。

 いずれにせよAKBの仕事ということで、まぁ、結果オーライなのでしょうが せめて挿絵(萌えイラスト)を峯岸の実写に差し替えたバージョンでも出版できないかと思います。

もしドラ」が売れた本当の意味

 さて、実はここからが本題です。

 巷では本書を指して、「萌え小説と実用書を融合させた先駆け」と言いますが、これには前例があります。

 それは06年から開始されたライトノベルの人気シリーズ「狼と香辛料」(著:支倉凍砂/絵:文倉十)です。

 この作品は「主人公の旅商人がヒロインの狼(人外)とともに商売上の困難に立ち向かっていく」という内容ですが、これは「ラノベ経済小説をやった先駆け」なのです。

 この「ジャンル越境」が一般の読者のもとにも届いたことの、あるいはその徹底の証拠として「もしドラ」はあるのであり、そこには「2次元から3次元へ」というベクトルが確認できます。

 この意味で「芸能人」は「2.5次元」ですから、人気のアイドルグループからヒロインのモデルが選ばれるというのは、必然と言えるでしょう。

 ただ、そのムーヴメントが「新しすぎた」がゆえに、「モデルになるメンバー」と「演じるメンバー」がズレてしまった。(領域が混沌としていた)

 この現象こそが、2010年のAKB、ひいてはアイドル業界、もっと広く取って日本社会の(混沌の)象徴だったと言えるでしょう。

平野綾が済ませたイニシエーション

 そのほかのアイドルも見ていきましょう。

 まずK-POPですが、これはKARAについて論じたので端折ります。

 次は、赤丸急上昇のももクロですが、筆者の注目する前山田健一ヒャダイン)が曲を書き下ろすなど、注目された一方でヒットには恵まれませんでした。

 この意味で、同じ作曲家と組んだ、アニソン歌手の麻生夏子のほうが見ものだったと言えます。*3

 アニメといえば、忘れてはいけないのが、平野綾の存在です。

 詳しくは別エントリで論じますが、声優アイドルである彼女が、深夜枠とはいえ、CXの「お笑い番組」(←ここ重要)でレギュラーを持ちました。

 これまでテレビに出る声優といえば、「さん付け」や「ちゃん付け」、さもなくば「○○(キャラクター)の声のひと」というふうに、あくまで「お客様」として扱われていたものですが、

 この番組の彼女は、共演者のピースの綾部から「平野」と呼び捨てにされているのです。

 これは彼女が「仲間」として認知されている証拠ですから、綾部に対してファンは拍手を送るべきでしょう。*4 *5

まとめ

 「もしドラ」のヒットや、平野綾の呼び捨て(あるいは非処女カミングアウト問題*6)。

 これらはともに、「オタク・2次元領域」から「非オタク・3次元領域」への越境というテーマで括れます。

 「もしドラ」における「モデルと演者のズレ」といった現象は、この「不徹底」によって起きたものであり、その意味では「K-POPの中途半端なヒット」も同じです。

 妹萌えの正体――「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」から考える
 http://d.hatena.ne.jp/salbun/20100813/1281656684

 以前、こちらで論じたように、二次元の世界でも「俺妹」(2010年度の4クール目に放送された)が、そのような「2つの文脈の混乱」を描いたものでした。

 ですので、2010年はさまざまな角度から見て、「混沌としていた」と言うことができるのです。

*1:小倉優子論に寄せて。

*2:レコチョクの公式で発表された「レコチョクランキング(着うたフル®+着うたフルプラス®)」に依拠。

*3:麻生×前山田のコンビがEDテーマを提供したアニメ「バカとテストと召喚獣」「えむえむっ!」はいずれもクリティカルな作品でした。追って論じたいと思います。

*4:声優ということならば「けいおん」のHTTについても論じるべきでしょうが、これはむしろ音楽論の領域なので割愛します。

*5:このベースになっているものの1つが、やはり声優アイドルである水樹奈々の活躍であることは明白です。

*6:「アイドル処女信仰」にとって最後の砦であった声優アイドルまでもが、「非オタク」サイドの「恋愛資本主義」に陥落してしまった。これも1つの越境です。