「AKBINGO!」に観る、おネエのファッションチェックの絵空事性について
昨日の「AKBINGO!」(NTV)では、恒例となった『AKB48 私服コレクション』をやっていました。
これはメンバーが自分の私服をガチで披露し、その出来・不出来を競う(=コーディネートを「モテ」「ちょいモテ」「ちょいおブス」「おブス」などで判定する)という企画ですが、レギュラー審査員として、「ファッションプロデューサー」兼「おネエタレント」の植松晃士が招かれました。
彼の行うファッションチェックは、笑いあり、厳しい指導ありと、毎回、視聴者を楽しませてくれるのですが、ときに違和感を覚えることがあります。
男子ウケしか考えていない?
企画に参加するメンバーは、毎回1つのテーマ(状況設定)を与えられ、それに沿ったコーディネートを求められるのですが、モチーフは「男性と外出する」という形に統一されています。
これは「男子ウケ」を狙ったものに見えますが、実際、この企画が狙っているのは「女子ウケ」(=男子に女子のコーディネートを教えてもしょうがない)なのであり、ここには企画意図のブレがあります。
言い換えるなら、「企画そのもの=女子ウケ(外枠)」、「企画内の設定=男子ウケ(内枠)」というズレがあるわけです。
AKB48「ヘビーローテーション」に物申す
http://d.hatena.ne.jp/salbun/20100822/1282452595
以前、こちらのエントリで、「最近のAKBは女子ウケを狙っているのではないか?」と書きましたが、この企画が恒例になったことは、女子の視聴者が増えていることを意味しています。
すると、その「女子ウケの象徴」である植松が、メンバーに「女友達と外出」のような課題を与えないことは、どこかちぐはぐな印象があるものなのです。
ただし、植松の正しい判断によって、このようなディレクションになった可能性はあります。
「ファッションチェック」という企画が、ただでさえ「女子ウケ」に傾いたものなので、「男子とお出かけ」という設定を取り入れることで、うまくバランスが取られたのだと。
wikipediaの記載漏れ問題
実際のところ、どうなのでしょうか。
彼はそのような「バランス感覚」を持った人物なのでしょうか。
そのような疑問は、番組の中で明かされることはありませんし、植松のブログをチェックしても分かりません。
【akbingo】のブログ検索結果 - Ameba Search -
http://search.ameba.jp/search.html?q=akbingo&aid=uematsu-koji
これは彼のブログ内を検索したもので、「AKBINGO!に出ます。見てね」としか書かれていません。
ただ、wikipediaを見ると、気が付くことがあります。
植松晃士 - wikipedia -
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A4%8D%E6%9D%BE%E6%99%83%E5%A3%AB
(2010年10月07日午前10時28分現在)
それは、テレビ出演の欄に「AKBINGO!」が書かれていないということです。
彼は同番組で「レギュラー」ないし「準レギュラー」扱いをされていますし、彼自身がブログで「見てね」と『毎回書いている』のですから、ファンとしてはwikipediaに載せないのは不自然です。
これが意味するのは、「AKBINGO!」における彼の活動を、ファンが「チェックしていない」、もしくは「厳しくチェックしていない」ということでしょう。
また、彼ないし彼のファンは、『AKB48 私服コレクション』について、「所詮アイドルといっしょの仕事だからテキトーでいいだろ」と思っているということではないのでしょうか。*1
おネエは本当にファッションに詳しいのか?
これが正しい場合、植松の、引いては「おネエタレント全体」の信頼が損なわれることになります。
おネエというのは、「男子・女子それぞれの目線を兼ね備えている」と言われ、ジェンダーが錯綜したこの21世紀において、とりわけファッション批評の面から、あちこちで引っぱりダコにされています。
ここで大事なのは「おネエの複眼的な視座」ですが、これがもし真っ赤な嘘だとしたら、「おネエの批評の信憑性」が根底から覆されることになります。
これを否定するためには、「彼(彼ら)の活動が正しかどうか」を観察する必要があり、その観察者は、「彼らが複眼的な視座を持っていること」を証明しなければいけません。
日ごろ、「おネエのファッション批評」の舞台は、『ピーコのファッションチェック』に代表される、午前や午後のワイドショーや雑誌であり、これは「女性向けのコンテンツ」です。
これだけでは、「おネエが女性視点を持っていること」しか証明できませんので、「彼らの正しさ」を証明するには、「男性向けのコンテンツ」で同様のことをしなくてはなりません。
アイドル番組である「AKBINGO!」は、この点でうってつけなのですが、肝心の同番組を、おネエのファンは「(熱心に)チェックしていない」わけですから、これは「おネエが女子目線でしかファッションを論じられない」ことを意味するのではないでしょうか。
つまり、「おネエはファッションに詳しい」というのは、ただの神話に過ぎないのではないかと。
むしろおネエは「男子ウケ」こそ分からない?
そもそもの話、多くのおネエは同性愛者です。
彼らが『AKB48 私服コレクション』にあるような『街歩きのシチュエーション』にいるとき、つねに傍らには「女性(おネエ含む)」がいるわけで、彼らが「ファッションチェック」をするのは、つねに「女性目線」なのです。
彼らがもし本当に「男子目線を持っている(男子ウケが分かる)」のだとすれば、彼らはそのまなざしを、一体いつ・どこで鍛えているのか?ということになります。
今のところ、この疑問を晴らしてくれる情報を、筆者は知りません。
むろん、これは「女に対して欲情できないやつに、男の気持ちなんて分からない」という、そんな単純な話をしているのではありません。
欲情できなくとも、正しく観察をしていれば、自ずと答えは出るわけですから、彼らの性癖に口出しするのはまちがいです。
ただ、くり返すように、植松のwikipediaのページに見られるような事態は、その観察の不備を示しているのではないかと言いたいのです。
予告
もっとも、「番組の決定権はディレクターにあり、植松に口出しすることはできない」という話はあります。
しかし、なぜそのように要求されるのか(=なぜ「男子目線でコメントしてくれ」と言われるのか)という疑問は残るわけで、最近のAKB48の女子ウケ狙いに、それは明らかに矛盾しているのです。
ならば、植松自信が「女子目線でやりたい」と言えば、従うのがスタッフというものであり、企画の秋元康なのではないでしょうか。
実際、そのようになっていないということ、言い換えれば、おネエがそのようなジェンダーの矛盾の渦中にいるということ、加えて、その事態におネエのファンが気づいていないこと(=wikipediaの不備)は、おネエがどこか他人事として、男子目線を語っているからではないかと思います。
ここまで見てきた話は、要約すると、「おネエという非男子化した(=EDになった)男性が女性とどう向き合うか」ということであり、「彼らはなぜ他人の話(アイドル番組)になったとたん急に男子化(=勃起)するのか*2」ということです。
こうした問題は、追って論じていきます。
(※恐らく、それは以前からくりかえし論じているデートマニュアルの問題として語ることになるでしょう)