「大好きだ。前田敦子が大好きだ」――声の限り叫ぼう
2010年05月23日の「Music Lovers」(NTV)は、AKB48の出演でした。
この番組のフォーマットは「ファンを呼んでアーティストと語り合わせる」というものですが、今回はアイドルグループということもあり、Guest Lovers(ファンのこと)の南海キャンディーズ山里亮太、スピードワゴンの小沢一敬、サーターアンダギーの山田親太郎の3人に、「メンバーの中でタイプなのは誰?」という質問をしました。
答えは、次のようなもの。
特別、意外な結果ではないというか、意外だとしても、いったい何が原因なのか分からないひとが多いと思います。
つまり「なぜセンターの前田敦子がいないのか」という疑問に、誰も答えられないだろうということです。
アイドルグループのセンターは、キャラクター力学的にいって無色透明な存在
小沢はスピードワゴンのネタ「あまーい!」にあるように、ベタでラブラブな恋人同士の関係を好んで扱う芸風ですが、これを考えればセンターの前田や、あるいは正統派アイドルとされる渡辺麻友が選ばれてもおかしくなさそうです。
しかし渡辺は二次元ヲタで「現実の男性に興味はありません。二次元の男がいたら、私のところへ来なさい。以上!」とか言い出しそうなタイプです。
実際、こんな画像もあります。
http://dl3.getuploader.com/g/9%7Cakb48/78/mayu.jpg
アイドルサイボーグとかCGとか言われるのは、たんに見た目だけのことではないのです。
さらにセンターの存在というのは厄介なもので、「インドア系の渡辺vsアウトドア派の宮澤」というふうにバランスが取られた状態でグループが構成されているため、そのポジションは「補い合う相手」がいないタイプが選ばれるのです。
例えば渡辺がセンターに納まると、逆のタイプの宮澤が望まれる(=ファンから批判が起こる)。
モーニング娘。でいうと、「ベタな少女キャラ」であった石川梨華が「ザ☆ピ〜ス!」でセンターを務めたら、その次は「Mr.Moonlight」で「男前キャラ」の吉澤ひとみがセンターになるというように、バランスが取られなければいけないのです。
AKBにそのようなシステムはなく、そもそも「総選挙でファンに選んでもらう」スタイルを取ると標榜しているから、土台からムリな話なのです。
よってセンターに収まるのは、対になるタイプがいない、それゆえ無個性なタイプになる。
アイドル雑誌「BUBKA」の座談会でライムスターの宇多丸が「AKBのセンターがなぜ前田か」について、「顔にインパクトがあるから」という回答をしていました*1が、ここでビジュアルが注目されているのは、逆にいえばキャラクターが無色透明だからでしょう。
そして「アメトーーク!」の「○○芸人」や小説・ドラマ「野ブタ。をプロデュース」などに見られるように、キャラを場面で使い分けることが当たり前となったコミュニケーションの世代が、AKBのファンには多いのです。
「キャラがあること」を大前提としてグループが出来ており、だからこそ、そうでない世代のモーニング娘。*2の「ハロー!モーニング」より、彼女たちAKB48の「AKBINGO!」のほうが、(少なくとも2010年代現在の視聴者にとっては)バラエティ番組として面白いということが客観的に言えるわけです。
宮澤佐江のようなボーイッシュタイプがモテるわけ
つまり、こういうことです。
女の子キャラ・・・腐女子化(二次元に形而上化)してしまい、
現実の男子が相手にされない。(渡辺)
センターの子・・・無個性ゆえ『なぜ好きなのか』が語りにくい。
(=単に好きだとしか言えずヲタとして芸がない)(前田)
そして宮澤のようなボーイッシュなタイプというのは、反動で非常に乙女ちっくになるものです。
宮澤とともにツインタワーと言われ、身長や性格の面で男性的だと思われている秋元才加が、「AKBINGO!」(NTV)のようなホームではなく「Shibuya Deep A」(NHK-BS)のようなアウェーの番組でソロ出演すると、なぜか声のトーンが上がり、表情やしぐさも女らしいブリッコキャラになるということが証拠です。
よって小沢や山田がそこまで見抜いているかどうかは分かりませんが、「いわゆるベタな少女」を求めようとすると、そうしたねじれ現象が生まれてしまうというのが、2010年代のスタンダードだと言えます。
あるいは、こういう説明のほうが分かり良いでしょうか。
「乙女を演じるスポ根性ドラマとしてのアイドル物語の主人公は、宮澤や秋元のような熱血タイプが相応しい」
前田敦子の孤独
宮澤のようなタイプは、小沢や山田のようなファンが理解してくれるし、渡辺のようなタイプには二次元のキャラがいる。
ところが前田はただ人気投票の順位ばかり高く、先のアンケートのように誰からも名前を挙げてもらえないという、ある意味、空虚な立場に置かれているわけです。
よく彼女は「AKBINGO!」で、バッドボーイズの佐田から「おまえ眠たいんか!」とツッコまれていますが、本当に眠たいわけではないのだと思います。
くり返すように、いまどきのバラエティ番組というのはキャラありきで進むため、キャラがない人間には本来的に居場所がないのです。
しかし「AKB48の番組」という括りがされている以上、統計(人気投票)という分かりやすい指標でトップ人気になった前田は、そこに「いなければいけない存在」です。
なのに強調するべきキャラもなく、かといってアイドルのバラエティでの仕事は被虐(だから「ムチャぶりドッジボール」が好評を博す)にあるから、前田はよく分からない奇声を発したり、粉・パイの餌食になる(前田はレギュラーメンバーで一番それを食らっています)ぐらいしかすることがないのです。
くり返すように、何らかのキャラがあれば、それと対になったメンバーと合わさることで相乗効果が生まれ、はっきりと番組に機能していきますが、前田の場合、それができない。
「対になる存在」
その前田に足りないものの代わりになってやれるのは、「ファン」しかいないと思います。
アイドルグループ「アイドル」のセンター、AKB48(5才)を応援する
いまの「アイドル戦国時代」、「センター」になっているのは「AKB48」なのだから、「AKB48」もまた「無個性」であり、「誰かの補完としての存在を欲している」と言えます。
こう考えたとき、ほかのアイドルのヲタがDD的にAKBを応援することの根拠が生まれます。
また、おなじアイドル業界を盛り上げていく仲間じゃないかという意味もあるでしょう。
筆者はハロプロを結成当初から見てきて、もう13年が過ぎたことになりますが、どんなアイドルグループでも売れている限り応援しようと思うし、必ずセンターの子を応援しよう、好きになろうと決めています。
よって筆者は、こう言いたい。
「ぼくは前田敦子が好きだ」