2010年のKARAの日本での活動のまとめ(1)――「ジャンピン(韓国語ver)」の意味
今年も暮れにさしかかり、一年の総まとめをしておく時期になりました。
今回は日本におけるKARAとK-POPの動きを見ていきましょう。
K-POP旋風は巻き起こったか?
以前、筆者はこんなエントリを立てました。
KARAは日本でウケるか −4 Minuteの舞台裏に見る試行錯誤から考える−(1/2)
http://d.hatena.ne.jp/salbun/20100527/1274931394
内容としては、「K-POPが日本で大ヒットするのはむずかしいだろう」というものでした。
また、こちらのエントリでは、ダンスの面からも同じようなことが言える、と指摘しました。
韓国で流行ったダンス(춤 チュム)は、日本で流行らない
http://d.hatena.ne.jp/salbun/20100905/1283683990
実際のところ、どうだったでしょう。
メディアが騒ぎ立てるほどの記録は出なかったのではないでしょうか。
こういうと反論が帰って来そうですが、とはいえ、それにはもっともな部分があります。
昨今の日本の音楽マーケットには問題があって、各メディアのあいだに断層がはしっているからです。
2010年の音楽メディア的状況から考える
別の言い方をするなら、「CDなどパッケージもの」と「配信やYouTubeなどノンパッケージもの」が別々に語られているということで、これにより「売れた」「売れない」が判別しにくくなっているのです。
例えば、テレビを見ている限り、今年はあたかも西野カナの快進撃が存在しなかったかのように見えることがありますが、これはテレビが前者しか取り上げない(=例のネット嫌いの一環の)せいです。
今年の年末のワイドショーや情報番組の音楽コーナーはみな、「オリコンの年間CDシングルトップ10を嵐とAKB48が独占した」に持っていかれてしまいました。
これと同じように、K-POP勢もメディアのすき間に埋もれてしまったのではないかと、そのような疑念がなりたつのです。
しかし、例の紅白の落選を引き合いに出すまでもなく、さまざまな記録から、それはありえないことだと分かります。
K-POP勢のトップは、東方神起の「BREAK OUT!」が年間のオリコンCDランキングで16位、KARAの「ミスター」がレコチョクの年間ランキングで32位となっていて、やはり「ブレイクとは言えない」と分かります。*1
それなりの存在感は放っていたK-POP
では、今年いっぱい猛威をふるった「K-POPの存在感」というのは、ただの幻だったのでしょうか。
そんなことはありません。
先ほどのエントリ(上側)で言ったとおり、K-POPには独特の感覚がありますが、それは日本人の耳に新鮮に響いたはずです。
具体的に確認できるのが「ハングルの使用」で、KARAの「ミスター」や少女時代の両シングルのヴォーカル&歌詞におけるそれは、筆者の知る限り、日本のヒット曲における初めての現象です。
これは日本人にとって、K-POPが特別なものであったことを示しています*2から、去年の東方神起から続く一連のブームの中で、1つの成果が出たと言えるでしょう。
今後、これが大ヒットにつながっていくのか。
それを考える上で必要な作業は、すでに行ってあります。
引用した2つのエントリにおいて、「K-POPはJ-POPのメロディを取り入れるのか?」という「楽曲面の疑問」(上)として、また「日本でK-POPのダンスはウケない」という「ダンス面の断定」(下)として。
Jumpin'「up(↑)」→Jumpin'「down(↓)」
これを証明するかのような映像が、つい先日、発見されました。
それは現在、BSジャパンで放送されている「M countdown」という韓国の音楽番組*3でして、”カムバックステージ”と銘打って、KARAが最新曲「ジャンピン」で出演していたのです。
むろん、現地のことば(ハングル)で唄われていたのですが、驚くべきはダンスです。
サビの「Jumpin' Jumpin' Jumpin'up♪」の部分が、日本語版の「ふり上げた両手で飛ぶような動き」(上半身主体)から、「スキーをするような動き」(下半身主体)に変わっていたのです。
KARA - ジャンピン (日本語(上半身)バージョン)
http://www.youtube.com/watch?v=yPVQF8e6Go0&feature=related
KARA 점핑(Jumping) (韓国(下半身)バージョン)
http://www.youtube.com/watch?v=wtmTW4sODlo
(いずれも50秒ごろから)
これは意味上、改悪に当たります。
タイトルが「ジャンピン」である以上、ダンスは「上昇志向(=上半身主体)」であるべきなのです。
これはKARAサイド*4がダンス文化の日韓のちがいについて理解していることの証拠ではないでしょうか。
むろん意図の有無は不明ですが、KARAといえば「K-POPのダンスの代表」的存在ですので、今後の展開によっては、これがK-POPサイドからの「白旗」だったと受け取れるかもしれません。
予告
もう一方の「楽曲面」に関してですが、日本的なもの(PPPHやサビ前のフィル)が取り入れられることはありませんでした。
オリコンのランキングに話を戻すと、KARAと少女時代はPPPHを使ったSKE48の「1!2!3!4! ヨロシク!」にすら勝てていません*5が、この「日本産アイドルの壁」は「K-POPふうの曲調」*6それ自体なのではないでしょうか。
以前にも言ったとおり、彼女たちには「直球ど真ん中のアイドルソング*7」を唄ってほしいものです。
さて、予告です。
2010年、KARAの日本での活動において、「楽曲」「ダンス」と並んで注目を集めたのが「テレビ番組への出演ラッシュ」でした。
パート2では、これについて、以前予告しておいた「キャラクター論から見たKARA」として書いてみたいと思います。
*1:YouTubeの再生回数は参考にしませんでした。理由は「どこの誰がアクセスしているか不明だから」。ここではあくまで「日本で売れたかどうか」が大事なのです。
*2:これについては別のエントリを立てて詳しく論じたいと思います。
*3:通称:Mカ・MCD。放送時間は毎週水曜の夕方6時50分から。
*4:KARAはメンバー自身がダンスを考えていますが、最終的なチェックをするのは事務所でしょう。
*5:放課後ティータイムやチームドラゴン from AKB48にすら負けてる。
*6:リフレインの多いK-POPのメロディは、リズムが単調になりがちで、PPPHを含む変則的なリズムを好むJ-POPのリスナーに対し、興奮こそ与えど、安心感は与えない。
*7:以前、予告したとおり、この条件は後で論じます。