韓国で流行ったダンス(춤 チュム)は、日本で流行らない
この前予告しておいた少女時代(@「めざましテレビ」)の話は、もう少し掛かってしまいそうです。
その代わりと言ってはなんですが、少し関連のある話をしたいと思います。
Dancing on the Tatami
以前、筆者はこちらのエントリでアイドルのダンスについて論じました。
Q:いま一番ダンスがうまいアイドルは誰?――A:鈴木愛理(と前田憂佳)(1/3)
http://d.hatena.ne.jp/salbun/20100606/1275794940
要約(意訳)をすると、「アイドルは下半身よりも上半身で踊りを見せていくべきだ」という話でした。
あちらではコメント欄に的外れな反論がありましたので、念を押す意味で、もう少しちがった説明をしてみたいと思います。
ここでいうアイドルというのは日本人のステレオタイプの1つですが、日本人は家の中で靴をはきません。
これは畳の上で生活しているためで、この素材が脆く、フローリングとはちがって、その上で激しい動きをすることができない(すぐに擦り切れてしまうタイプの)ものだからです。
いまやフローリングもだいぶ浸透してきましたが、いまだに屋内で靴を脱ぐ文化は残っているため、「精神文化としての下半身忌避」が色濃く残っている*1と言えるのです。
よって、日本人がする動きというのは、大抵「上半身中心のもの」になります。
ジャニーズと女性アイドルのちがい
CD不況と言われる昨今、相変わらず売れまくっているのがジャニーズですが、読者の中には、曲として覚えていたり、カラオケで歌えるという人も多いのではないでしょうか。
ただ「ダンスを踊れる」となると、途端に少なくなってしまうはずです。
これは「クオリティ」ではなく「ジャンル」の問題としてあるものです。
ジャニーズは男性アイドルですから、ルパン3世のように、「上半身ががっしりして、下半身が細い」という体型であることが多く、この「逆三角形という男性的な特徴」は、「中性的であるべきアイドル」にとっては欠点となります。
言い換えれば、「発達した上半身でショウアップすること」は得意なのですが、「華奢な下半身」で同じことをするのがむずかしく、そこを工夫していくことが成功の鍵となります。
実際、ジャニーズのダンスはみな「下半身をクネクネさせる」動きになっていて、V6などが典型になります。
一方、女性はというと、出産機能のため骨盤が大きく「下半身がむっちりした体型」になっていますから、この性別(女性)のアイドルは他方の性別(男性)のアイドルとちがって、「上半身を強調したダンス」を踊るのです。
ジャニーズのダンスが一向に浸透しないわけ
具体例としてみてみると、ピンクレディーの「UFO」、松田聖子の「天使のウィンク」、おニャン子クラブの「セーラー服を脱がさないで」、SPEEDの「WHITE LOVE」、モーニング娘。の「LOVEマシーン」、AKB48の「会いたかった」と続きます。
さて、お気づきでしょうか。
これがすべて「国民の誰もが知っていて、かつマネできる振り付けであり、おまけに女性によるものだ」ということに。
これは日本人が「上半身を中心とした身体性の文化」を持っているためで、下半身を活かしたジャニーズのヒット曲の数々は、「売れているわりに覚えられていない」のが現状です。
唯一の例外がSMAPの「世界に一つだけの花」で、これは誰もが知っている・マネできるでしょうが、例外的に「上半身の振り付け」です。
あのモンスターグループSMAPですら、日ごろは下半身で踊っているのに、いざ「国民的な支持を得る」となった途端、シフトして上半身で踊り始めるのです。
これはもはや「日本で振り付けをヒットさせたければ、『絶対に』上半身を中心にしなければいけない」というふうにして、テーゼを掲げなければいけない現象です。
韓流アーティストのダンスは日本人に合わない
くり返すように、「アイドル」とは「日本人のある種のステレオタイプ」ですから、「国民に対して共通のイメージ(ブリッコ・カワイイなど)を抱かせるべき存在」です。
これは「メジャーな舞台に立つべき(=でないと共通認識など生まれない)」ということを意味しますから、「ダンス」においては「上半身(=共通の身体性)を中心」にすべきだということになります。
近頃はやりのKARAや少女時代といった韓流のアーティストは、この点で分が悪いのです。
彼女たちはKARAの「ミスター」にある「お尻フリフリダンス」や、少女時代の「美脚ダンス」のように「下半身を中心」に踊っていますが、これは完全に日本文化のベクトルと逆を行っていることになり、ここから「韓国で流行ったダンス(チュム)が、そのまま日本で流行ることはない」と結論づけることができるのです。